産休計算を徹底解説!いつからいつまで?手当はいくら?
妊娠は女性にとって人生の大きな転機であり、新しい命を迎える喜びとともに、仕事との両立や経済的な不安を感じる方も少なくありません。
特に「産休」については、いつからいつまで取得できるのか、どのくらい手当がもらえるのかなど、気になることがたくさんあるでしょう。
この記事では、出産を控える方やそのご家族に向けて、産休計算の基本的な知識から、出産手当金や育児休業給付金といった手当について、わかりやすく解説します。
1.産休計算の基本:産前産後休業とは?
まずは、産前産後休業(以下、産休)の基本的な制度について理解しましょう。
産休は、労働基準法で定められた女性労働者の権利であり、出産前後の身体を休ませ、育児に専念するための大切な期間です。
1-1.産前休業は「任意」、産後休業は「強制」
産休は、産前休業と産後休業の2つに分けられます。
産前休業
: 出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得できます。この期間は労働者本人が請求した場合のみ取得できる「任意」の休業です。体調や仕事の状況に合わせて、取得するかどうかを決められます。
産後休業
: 出産日の翌日から8週間は、原則として就業することができない「強制」の休業です。ただし、産後6週間を経過後に医師が問題ないと判断した場合に限り、本人が希望すれば就業することも可能です。
1-2.産休の起算日を正確に把握する

産休計算において最も重要なのが、産前休業の起算日です。
産前休業は出産予定日の6週間前が開始日となります。
この「6週間前」の数え方には注意が必要です。
例えば、出産予定日が8月1日だとします。
8月1日の6週間前を計算するには、8月1日から日数を逆算します。
8月1日(予定日)
7月31日
7月30日
7月29日
7月28日
7月27日
7月26日(1週目終了)
…と数えていくと、6週間前の開始日は6月20日となります。
このように、出産予定日を含まずに逆算して数えるのがポイントです。
正確な日付を知るためには、母子手帳に記載されている出産予定日を確認し、カレンダーなどで数えましょう。
2.産休と給料:出産手当金とは?
産休中は会社からの給料が支払われないことが一般的です。
しかし、健康保険から「出産手当金」が支給されるため、収入が途絶える心配はありません。
2-1.出産手当金の支給要件

出産手当金を受け取るためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
健康保険の被保険者であること: 会社員や公務員など、健康保険に加入している人が対象です。国民健康保険の加入者は対象外となります。
妊娠4ヶ月(85日)以上の出産であること: 流産や死産の場合でも、妊娠4ヶ月以上であれば対象となります。
産休中に給料の支払いがないこと: 会社から給料が支払われている期間は、出産手当金は支給されません。ただし、給料が出産手当金より少ない場合は、差額が支給されます。
2-2.出産手当金の支給期間
出産手当金が支給される期間は、産前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)と産後56日間です。
出産日が出産予定日より遅れた場合でも、産前42日間は満額支給されます。
また、出産日が出産予定日より早まった場合も、出産日までの期間と産後56日間が支給対象です。
2-3.出産手当金の計算方法

出産手当金の1日あたりの支給額は、以下の計算式で算出されます。
支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3
標準報酬月額
: 健康保険料を計算する際の基準となる月の給料です。給料明細などで確認できます。
例えば、過去12ヶ月間の標準報酬月額の平均が30万円だった場合、1日あたりの支給額は約6,667円(30万円 ÷ 30日 × 2/3)となります。
出産手当金の総支給額は、支給期間に1日あたりの支給額を乗じて計算されます。
例えば、出産手当金の支給期間が98日(産前42日+産後56日)だとすると、 約6,667円 × 98日 = 約653,366円 が支給されます。
3.産休後の育児休業と育児休業給付金
産休が終わった後も、子どもが1歳になるまで(特別な事情がある場合は最長2歳まで)、育児休業を取得することができます。
育児休業中は、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
3-1.育児休業給付金の支給要件
育児休業給付金を受け取るためには、以下の要件を満たす必要があります。
雇用保険の被保険者であること: 会社員や公務員など、雇用保険に加入している人が対象です。
育児休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること: パートやアルバイトの方も、この要件を満たせば対象となります。
育児休業中に、休業開始前の1ヶ月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと: 会社から給料が支払われている場合は、支給額が調整されます。
3-2.育児休業給付金の支給期間

育児休業給付金の支給期間は、原則として子どもが1歳になるまでです。
ただし、保育園に入れないなどの特別な事情がある場合は、1歳6ヶ月まで、さらに2歳まで延長が可能です。
3-3.育児休業給付金の計算方法
育児休業給付金の支給額は、育児休業開始からの期間によって変わります。
育児休業開始から6ヶ月まで: 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
育児休業開始から6ヶ月以降: 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
休業開始時賃金日額: 育児休業開始前6ヶ月間の賃金を180で割った金額です。
例えば、育児休業開始前6ヶ月間の賃金が合計180万円(月30万円)だった場合、休業開始時賃金日額は1万円(180万円 ÷ 180日)となります。
育児休業開始から6ヶ月間は、1ヶ月あたり約20.1万円(1万円 × 30日 × 67%)
それ以降は、1ヶ月あたり約15万円(1万円 × 30日 × 50%)
が支給されることになります。
4.産休・育休中の社会保険料はどうなる?
産休・育休中は、給料が支給されなくても、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料が免除されます。
これは、出産・育児中の経済的負担を軽減するための重要な制度です。
4-1.社会保険料免除の期間
健康保険料・厚生年金保険料
: 産前産後休業期間中、および育児休業期間中は、本人の申し出により社会保険料が免除されます。
この免除期間も、将来の年金額には影響しません。免除された期間も保険料を支払ったものとして、年金額が計算されます。
4-2.社会保険料免除の手続き

社会保険料の免除を受けるためには、会社を通じて年金事務所に「産前産後休業取得者申出書」や「育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。
会社が手続きを行ってくれることがほとんどですが、念のため確認しておきましょう。
5.統計データで見る産休・育休の現状

日本の産休・育休制度は、多くの働く女性に利用され、出産や育児を支える重要な役割を担っています。
具体的な統計データを見てみましょう。
産前産後休業の利用状況(厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」)
女性労働者の産前休業利用割合は90.5%
女性労働者の産後休業利用割合は98.9%
このデータから、産後休業はほぼ全ての女性労働者が取得している一方、産前休業も高い割合で利用されていることがわかります。
育児休業の取得状況(厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」)
女性の育児休業取得率は85.1%
多くの女性が育児休業を利用し、育児休業給付金を活用していることが示されています。
健康保険加入者の標準報酬月額の平均(日本健康保険組合連合会 2023年調査)
健康保険に加入する被保険者の標準報酬月額の平均は約32万円
この平均額をもとにすれば、出産手当金の計算の目安となり、多くの人が安心して出産に臨めるような経済的サポートが受けられることがわかります。
これらの統計データは、産休・育休制度が社会に広く浸透し、多くの人がその恩恵を受けていることを裏付けています。
6.産休に関するよくある疑問と注意点

6-1.出産日が予定日とずれた場合は?
出産手当金の支給期間は、実際の出産日を基準に再計算されます。
出産日が予定日より早まっても、遅れても、支給期間が変わることはありません。
6-2.パートやアルバイトでも産休は取れる?
雇用形態にかかわらず、要件を満たせば産休を取得できます。
出産手当金や育児休業給付金も、同様に支給要件を満たせば受け取ることが可能です。
6-3.妊娠中の休業は?
産休とは別に、妊娠中の体調不良などによる休業は、会社ごとの制度や有給休暇を利用することになります。
休業手当は支給されません。
6-4.産休・育休中のボーナスや退職金は?
産休・育休中のボーナスや退職金の扱いは、会社の就業規則によって異なります。
一般的には、休業期間中は査定に影響が出たり、支給対象外となる場合がありますので、事前に確認しておくことが重要です。
6-5.会社の制度も確認しよう
会社によっては、法定の産休・育休制度に加えて、独自の支援制度(出産祝い金、育児支援手当など)を設けている場合があります。
就業規則を確認したり、人事担当者に相談したりして、利用できる制度がないか確認しましょう。
7.まとめ:計画的な産休計算で安心して出産・育児を
この記事では、産休計算の基本的な考え方から、出産手当金、育児休業給付金といった経済的サポート、社会保険料の免除について詳しく解説しました。
妊娠・出産は大きなライフイベントであり、金銭面での不安を抱えることは少なくありません。
しかし、日本の制度は、出産・育児を頑張るお母さん、お父さんをしっかりとサポートしてくれます。
この記事を書いた人
山下 こうすけ

わくわくボディクリニック代表 | 美容・健康業界の第一人者
2003年、セラピストとしてキャリアをスタートし、2010年に「わくわくボディクリニック」を創業。
独自に開発した20年以上の研究に基づく施術メソッドが高く評価され、現在では年間15,000人以上が来店する人気サロングループへと成長を遂げる。
また、その高い専門性と技術力が評価され、ミス・ジャパンの審査員も担当。
美容・健康に関するセミナー講師として、多くの女性の美と健康をサポートし続けている。
現在も施術の最前線に立ちつつ、最新の美容・健康トレンドを取り入れながら、多くの女性の「美」と「健康」をサポートし続けている。